ドバイ・アブダビ不動産を売ったときの税金——譲渡所得と「為替」の落とし穴
先に結論をお伝えします。海外不動産の売却で手取りを左右するのは、現地価格(AED)がいくら上がったかだけではありません。 カギは2つ——①いつ売るか(売却時にあなたが日本居住者か、非居住者か)、そして②為替です。とくに為替は、「AEDの値段はほとんど変わっていないのに、円建てでは利益が出ていることになり課税される」という、見落とされがちな落とし穴を生みます。順に整理します。
論点①:日本居住者が海外不動産を売ると、利益は日本で課税される
まず大前提です。日本にお住まいの方(日本居住者)は、世界のどこにある不動産を売っても、その売却益(譲渡所得)が日本の課税対象になります。 「海外の物件だから日本は関係ない」は誤りです。ドバイ・アブダビの物件も例外ではありません。
不動産の譲渡所得は、給与など他の所得とは分けて計算する分離課税で、ざっくり言うと次の式で出します。
この「売却価額」「取得費」は、いずれも円換算で計算します。ここに、次の②為替の問題が効いてきます。
論点②:長期と短期で、税率が「ほぼ倍」変わる
譲渡所得の税率は、その物件をどれだけ長く持っていたかで大きく変わります。
注意点が一つ。「5年」は売った年の1月1日時点で数えます。 「買ってから丸5年経った」ではなく、「売却した年の1月1日の時点で保有期間が5年を超えているか」で判定されるため、売るタイミングが数か月違うだけで税率がほぼ倍変わることがあります。出口の時期は、ここだけでも大きな差になります。
論点③:為替が生む「隠れた利益」——ここが最大の落とし穴
ここが、海外不動産でいちばん多くの方が驚くところです。譲渡所得は円換算で計算するため、現地価格(AED)が変わっていなくても、為替が動けば円建ての利益(または損失)が生まれます。
具体的には、取得費は購入時の為替、売却価額は売却時の為替で円に換算します。
つまり、円安が進んだ局面では、現地価格が横ばいでも円建てで利益が出たことになり、税金がかかることがあります。逆に円高に振れれば、円建てでは損失になることもあります。「AEDでいくら儲かったか」だけで手取りを考えると、想定が狂います。
さらに見落とされる「もう一段の為替差益」
為替の話には、実はもう一段あります。上の譲渡所得とは別に、売却で受け取ったAEDを円に換える(または別の通貨に換える)時点で、さらに為替差益が生じ、雑所得として課税されることがあります。
ポイントは、為替差益は「外貨を持っているだけ」では課税されず、円などに換えた(使った)時点で実現するという点です。たとえば、売却で得たAEDをしばらく現地口座に置き、後日さらに円安が進んだタイミングで円に換えれば、その差額が為替差益として課税対象になり得ます。
「売って終わり」ではなく、受け取った外貨をいつ・どのレートで円に戻すかまで含めて、手取りは決まります。
論点④:取得費・譲渡費用は何が引けるか
譲渡所得を圧縮するうえで、差し引ける費用を漏らさないことが重要です。
- 取得費:購入価格に加え、購入時の登記関連費用・仲介手数料など。建物部分は、保有期間に応じた減価償却を控除した後の金額になります
- 譲渡費用:売却時の仲介手数料など、売るために直接かかった費用
- 取得費が分からない場合:取得費が不明なときは、売却価額の5%を概算取得費とできますが、実額より不利になりがちです。購入時の契約書・送金記録・諸費用の領収書は必ず保管してください
論点⑤:「いつ売るか」で税金が変わる——居住者か、非居住者か
最後に、出口戦略の核心です。売却の時点で、あなたが日本居住者か、非居住者(UAE等へ移住済み)かで、課税のされ方が変わり得ます。
日本居住者のまま売れば、これまで述べたとおり日本で譲渡所得課税。一方、生活の本拠をUAEへ移し、税務上の非居住者になってから売却する場合は、課税関係が変わってきます(UAEには個人の譲渡所得課税が現状ありません)。ただし、ビザの居住と税務上の居住は別物であること、出国にまつわる課税(出国税の論点)、日本に住所があった期間に関する各種ルール、そして国外財産調書などの開示義務もあり、「移住すれば自動的に無税」という単純な話ではありません。
だからこそ——売却益は「いくらで売るか」だけでなく「いつ・どの居住ステータスで売るか」で手取りが変わります。出口は、買うときから設計しておくのが理想です。 売却をお考えの段階で、早めにご相談ください。
出典・参考
- 国税庁:譲渡所得(土地・建物等)、長期・短期譲渡所得の税率、取得費・譲渡費用、国外財産調書、居住者・非居住者の課税に関する各項目
- 復興特別所得税に関する各規定
- 所得に対する租税に関する二重課税の回避等のための日本国・UAE間の条約
※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。
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よくあるご質問
ドバイの物件を売って利益が出ました。日本で確定申告は必要ですか?
AEDでの値段はほとんど変わっていないのに、税金がかかると言われました。なぜですか?
5年を超えて持つと税金が安くなると聞きました。本当ですか?
移住して非居住者になってから売れば、日本の税金はかかりませんか?
物件を売った後、受け取ったAEDを円に換えるときも税金がかかりますか?
本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。最終的なご判断は、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。