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ドバイ・アブダビ不動産を売ったときの税金——譲渡所得と「為替」の落とし穴

監修:森 和孝(税理士・国際弁護士) | 本記事は一般的な情報提供です

先に結論をお伝えします。海外不動産の売却で手取りを左右するのは、現地価格(AED)がいくら上がったかだけではありません。 カギは2つ——①いつ売るか(売却時にあなたが日本居住者か、非居住者か)、そして②為替です。とくに為替は、「AEDの値段はほとんど変わっていないのに、円建てでは利益が出ていることになり課税される」という、見落とされがちな落とし穴を生みます。順に整理します。

ご確認ください(免責)本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。税制・実務は改正され得るため、結論はお客様の状況により異なります。最新かつ個別の判断は、必ず専門家・税務署・国税庁等の一次情報にてご確認ください。

論点①:日本居住者が海外不動産を売ると、利益は日本で課税される

まず大前提です。日本にお住まいの方(日本居住者)は、世界のどこにある不動産を売っても、その売却益(譲渡所得)が日本の課税対象になります。 「海外の物件だから日本は関係ない」は誤りです。ドバイ・アブダビの物件も例外ではありません。

不動産の譲渡所得は、給与など他の所得とは分けて計算する分離課税で、ざっくり言うと次の式で出します。

譲渡所得の基本式
譲渡所得 = 売却価額 −(取得費 + 譲渡費用)

この「売却価額」「取得費」は、いずれも円換算で計算します。ここに、次の②為替の問題が効いてきます。

論点②:長期と短期で、税率が「ほぼ倍」変わる

譲渡所得の税率は、その物件をどれだけ長く持っていたかで大きく変わります。

保有期間と税率(概略)
短期譲渡(保有 5年以下) → 税率 およそ 39%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税)
長期譲渡(保有 5年超) → 税率 およそ 20%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)

注意点が一つ。「5年」は売った年の1月1日時点で数えます。 「買ってから丸5年経った」ではなく、「売却した年の1月1日の時点で保有期間が5年を超えているか」で判定されるため、売るタイミングが数か月違うだけで税率がほぼ倍変わることがあります。出口の時期は、ここだけでも大きな差になります。

論点③:為替が生む「隠れた利益」——ここが最大の落とし穴

ここが、海外不動産でいちばん多くの方が驚くところです。譲渡所得は円換算で計算するため、現地価格(AED)が変わっていなくても、為替が動けば円建ての利益(または損失)が生まれます。

具体的には、取得費は購入時の為替、売却価額は売却時の為替で円に換算します。

数値イメージ:AEDの価格が同じでも、円では利益が出る
購入時:100万AED ×(1AED=38円)= 3,800万円 … これが取得費
売却時:100万AED ×(1AED=43円)= 4,300万円 … これが売却価額

AEDの価格は100万AEDのまま(値上がりゼロ)。
それでも円では 500万円の譲渡益 → 課税対象に。

つまり、円安が進んだ局面では、現地価格が横ばいでも円建てで利益が出たことになり、税金がかかることがあります。逆に円高に振れれば、円建てでは損失になることもあります。「AEDでいくら儲かったか」だけで手取りを考えると、想定が狂います。

さらに見落とされる「もう一段の為替差益」

為替の話には、実はもう一段あります。上の譲渡所得とは別に、売却で受け取ったAEDを円に換える(または別の通貨に換える)時点で、さらに為替差益が生じ、雑所得として課税されることがあります。

ポイントは、為替差益は「外貨を持っているだけ」では課税されず、円などに換えた(使った)時点で実現するという点です。たとえば、売却で得たAEDをしばらく現地口座に置き、後日さらに円安が進んだタイミングで円に換えれば、その差額が為替差益として課税対象になり得ます。

数値イメージ:譲渡所得とは別に、換金時にもう一度
①物件の売却益(譲渡所得) … 売却時の為替で円換算して計算
②受け取ったAEDを後日、円に換金 … 換金時にさらに円安なら、その差額が為替差益(雑所得)として課税され得る

「売って終わり」ではなく、受け取った外貨をいつ・どのレートで円に戻すかまで含めて、手取りは決まります。

💡 ここがポイント:海外不動産の損益は、「物件の値動き」と「為替の値動き」の掛け算。現地価格・為替・保有期間の3つで出口を設計してください。

論点④:取得費・譲渡費用は何が引けるか

譲渡所得を圧縮するうえで、差し引ける費用を漏らさないことが重要です。

論点⑤:「いつ売るか」で税金が変わる——居住者か、非居住者か

最後に、出口戦略の核心です。売却の時点で、あなたが日本居住者か、非居住者(UAE等へ移住済み)かで、課税のされ方が変わり得ます。

日本居住者のまま売れば、これまで述べたとおり日本で譲渡所得課税。一方、生活の本拠をUAEへ移し、税務上の非居住者になってから売却する場合は、課税関係が変わってきます(UAEには個人の譲渡所得課税が現状ありません)。ただし、ビザの居住と税務上の居住は別物であること、出国にまつわる課税(出国税の論点)、日本に住所があった期間に関する各種ルール、そして国外財産調書などの開示義務もあり、「移住すれば自動的に無税」という単純な話ではありません。

だからこそ——売却益は「いくらで売るか」だけでなく「いつ・どの居住ステータスで売るか」で手取りが変わります。出口は、買うときから設計しておくのが理想です。 売却をお考えの段階で、早めにご相談ください。

出典・参考

※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。

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よくあるご質問

ドバイの物件を売って利益が出ました。日本で確定申告は必要ですか?
日本居住者の方は、海外不動産の売却益も日本の課税対象です。原則として確定申告が必要になります。取得費・譲渡費用を漏れなく差し引くため、購入時の契約書や送金記録をご準備ください。
AEDでの値段はほとんど変わっていないのに、税金がかかると言われました。なぜですか?
譲渡所得は円換算で計算するためです。購入時より円安が進んでいると、現地価格が横ばいでも円建てでは利益が出たことになり、その差額が課税対象になります。
5年を超えて持つと税金が安くなると聞きました。本当ですか?
保有期間が5年を超えると長期譲渡となり、税率はおよそ半分になります。ただし「5年」は売却した年の1月1日時点で判定するため、売るタイミングに注意が必要です。
移住して非居住者になってから売れば、日本の税金はかかりませんか?
課税関係は変わり得ますが、「移住すれば自動的に無税」ではありません。税務上の居住者判定、出国に関する課税、国外財産の開示義務など複数の論点が絡みます。売却前にご相談ください。
物件を売った後、受け取ったAEDを円に換えるときも税金がかかりますか?
かかることがあります。物件の売却益(譲渡所得)とは別に、受け取った外貨を後日円などに換えた時点で為替差益が生じれば、雑所得として課税され得ます。外貨は持っているだけでは課税されず、換金・使用した時点で実現します。いつ・どのレートで円に戻すかも手取りに影響します。
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本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。最終的なご判断は、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。