ドバイ・アブダビ不動産と相続——「税金」と「承継のルール」、2つの備え
先に結論をお伝えします。海外不動産の相続には、性質の違う2つの備えが必要です。 ひとつは税金——ドバイ・アブダビの物件にも、日本の相続税がかかります(しかも評価が重くなりがちです)。もうひとつは承継のルール——UAEには相続税こそありませんが、遺言がないと、ご本人やご家族の意向とは異なる形で財産が承継されてしまうリスクがあります。「無税の国だから安心」ではありません。順に整理します。
論点①:日本の相続税は「世界中の財産」にかかる
まず税金です。日本の相続税は、亡くなった方やご相続人が日本に住所を有するなどの場合、世界のどこにある財産にもかかります(全世界財産課税)。 ドバイ・アブダビの不動産も当然その対象です。「海外資産だから日本の相続税は関係ない」は誤りです。
論点②:海外不動産は「評価が重く」なりがち
ここが見落とされがちな点です。日本国内の不動産は、相続税の評価で路線価など(実勢より低めになりやすい基準)を使えます。ところが、海外不動産にはその仕組みが使えず、原則として「時価(市場価格)」で評価します。
さらに、評価額は相続が発生した日の為替で円換算します。円安局面では、それだけで円建ての評価額が膨らみます。つまり、同じ価値の物件でも、国内より海外の方が相続税の負担が重くなりやすい。「値上がりした海外物件を遺す」ことは、相続税の観点では重い宿題を遺すことにもなり得ます。
論点③:UAEは相続税ゼロ。でも「遺言がない」と承継でつまずく
UAEには相続税がありません。ここだけ見ると安心ですが、本当の論点は「税金」より「誰に・どう承継されるか」です。
かつては「非ムスリムでもシャリーア(イスラム法)の原則がそのまま適用される」と説明されがちでしたが、現在はそれがそのまま自動適用されるわけではありません(UAEの法改正が進んでいます)。ただし——遺言がない場合に最終的にどう分けられるかは、依然としてかなり不透明です。UAEは裁判所や当局の裁量が広く、遺言がなければ結果を予測・コントロールしづらいのが実情で、法定のルールに沿って配偶者と子で分けられる・裁判所の手続き(判決)が必要になる、など、ご家族の想定と異なる結果になり得ます。海外資産が、意図しない形で・想定しない配分で承継されてしまう——これが、税金以上に深刻になりやすい落とし穴です。
対策は明快で、UAEで有効な遺言を整えておくことです。非ムスリム向けにはDIFC Wills(ドバイ国際金融センターの遺言登録制度)があり、コモンロー(英米法)に基づくDIFC裁判所で執行されます。実務上の利点も大きく、当社が連携する現地専門家を通じて、次のような形で対応できます。
ここは国際弁護士の領域であり、当社の中核的な強みです。
論点④:「移住したから日本の相続税は関係ない」とは限らない——10年ルール
「家族でUAEに移住したから、もう日本の相続税はかからない」と考えるのは早計です。日本国籍の方などの場合、日本に住所がなくなってからも一定期間(過去10年以内に日本に住所があったか等)は、海外財産も日本の相続税・贈与税の対象となり得ます。いわゆる10年ルールです。移住のタイミングと年数の設計を誤ると、想定外の課税になります。
論点⑤:手続きの現実——国際相続は「時間」と「資金」がかかる
最後に実務です。海外不動産の相続は、書類と時間の負担が大きくなりがちです。
- UAE側の手続き(死亡・相続関係の証明、遺言の執行、名義変更)と、日本側の相続税申告(原則10か月以内)を、並行して進める必要があります
- 現地書類の取得・翻訳・認証に時間がかかる
- 相続税は日本円で・期限内に納める必要があり、納税資金が問題になることがあります。納税のために海外物件を売却すると、今度は譲渡所得課税が発生し得ます(→ /tax/capital-gains)
だからこそ——相続対策は「持ち主が元気なうち」に、税金(評価・納税資金)と遺言(承継先)の両面で設計しておくことが肝心です。ご家族に負担を遺さないために、早めにご相談ください。
出典・参考
- 国税庁:相続税の納税義務者・課税財産の範囲(全世界財産課税)、財産の評価、国外財産の評価・為替換算、相続税の申告期限に関する各項目
- UAEにおける遺言制度(DIFC Wills Service Centre)および非ムスリムの承継・関連法に関する各規定
※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。
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よくあるご質問
ドバイの不動産は、日本の相続税の対象になりますか?
国内の不動産より相続税が重くなると聞きました。なぜですか?
UAEは相続税がないので、何も準備しなくて大丈夫ですか?
遺言は、わざわざドバイへ行かないと作れませんか?オフプランの物件でも作れますか?
家族で移住すれば、日本の相続税は避けられますか?
本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。最終的なご判断は、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。