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ドバイ・アブダビ不動産と相続——「税金」と「承継のルール」、2つの備え

監修:森 和孝(税理士・国際弁護士) | 本記事は一般的な情報提供です

先に結論をお伝えします。海外不動産の相続には、性質の違う2つの備えが必要です。 ひとつは税金——ドバイ・アブダビの物件にも、日本の相続税がかかります(しかも評価が重くなりがちです)。もうひとつは承継のルール——UAEには相続税こそありませんが、遺言がないと、ご本人やご家族の意向とは異なる形で財産が承継されてしまうリスクがあります。「無税の国だから安心」ではありません。順に整理します。

ご確認ください(免責)本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。税制・法制・実務は改正され得るため、結論はお客様の状況により異なります。最新かつ個別の判断は、必ず専門家・税務署・国税庁等の一次情報にてご確認ください。

論点①:日本の相続税は「世界中の財産」にかかる

まず税金です。日本の相続税は、亡くなった方やご相続人が日本に住所を有するなどの場合、世界のどこにある財産にもかかります(全世界財産課税)。 ドバイ・アブダビの不動産も当然その対象です。「海外資産だから日本の相続税は関係ない」は誤りです。

論点②:海外不動産は「評価が重く」なりがち

ここが見落とされがちな点です。日本国内の不動産は、相続税の評価で路線価など(実勢より低めになりやすい基準)を使えます。ところが、海外不動産にはその仕組みが使えず、原則として「時価(市場価格)」で評価します。

国内不動産と海外不動産の評価イメージ
国内不動産 → 路線価・固定資産税評価など(実勢価格より低めになりやすい)
海外不動産 → 時価(市場価格)で評価 → 相続税の課税価格が高くなりがち

さらに、評価額は相続が発生した日の為替で円換算します。円安局面では、それだけで円建ての評価額が膨らみます。つまり、同じ価値の物件でも、国内より海外の方が相続税の負担が重くなりやすい。「値上がりした海外物件を遺す」ことは、相続税の観点では重い宿題を遺すことにもなり得ます。

論点③:UAEは相続税ゼロ。でも「遺言がない」と承継でつまずく

UAEには相続税がありません。ここだけ見ると安心ですが、本当の論点は「税金」より「誰に・どう承継されるか」です。

かつては「非ムスリムでもシャリーア(イスラム法)の原則がそのまま適用される」と説明されがちでしたが、現在はそれがそのまま自動適用されるわけではありません(UAEの法改正が進んでいます)。ただし——遺言がない場合に最終的にどう分けられるかは、依然としてかなり不透明です。UAEは裁判所や当局の裁量が広く、遺言がなければ結果を予測・コントロールしづらいのが実情で、法定のルールに沿って配偶者と子で分けられる・裁判所の手続き(判決)が必要になる、など、ご家族の想定と異なる結果になり得ます。海外資産が、意図しない形で・想定しない配分で承継されてしまう——これが、税金以上に深刻になりやすい落とし穴です。

対策は明快で、UAEで有効な遺言を整えておくことです。非ムスリム向けにはDIFC Wills(ドバイ国際金融センターの遺言登録制度)があり、コモンロー(英米法)に基づくDIFC裁判所で執行されます。実務上の利点も大きく、当社が連携する現地専門家を通じて、次のような形で対応できます。

DIFC Willsでできること
  • 日本にいながら、オンラインで署名・登録が可能(ドバイへ渡航する必要なし。回線が良好であればよい)
  • 不動産だけでなく、ドバイ法人の株式(動産)も対象——UAE内の動産・不動産をまとめてカバー
  • 1通のDIFC Willで、ドバイ・アブダビなど全首長国の資産をカバー(アブダビ用に別の遺言を作る必要はない)
  • オフプラン(完成前)の権利も対象——完成を待たず、今から準備できる
  • ご夫婦にはミラー・ウィル(互いの意向を反映した一対の遺言)、未成年のお子様には後見人の指定も可能

ここは国際弁護士の領域であり、当社の中核的な強みです。

💡 ここがポイント:UAE不動産の相続対策は「節税」だけでなく「遺言で承継先を確定させる」ことが要。遺言がなければ結果は不透明。税金と遺言は、別々に・両方とも備える必要があります。

論点④:「移住したから日本の相続税は関係ない」とは限らない——10年ルール

「家族でUAEに移住したから、もう日本の相続税はかからない」と考えるのは早計です。日本国籍の方などの場合、日本に住所がなくなってからも一定期間(過去10年以内に日本に住所があったか等)は、海外財産も日本の相続税・贈与税の対象となり得ます。いわゆる10年ルールです。移住のタイミングと年数の設計を誤ると、想定外の課税になります。

論点⑤:手続きの現実——国際相続は「時間」と「資金」がかかる

最後に実務です。海外不動産の相続は、書類と時間の負担が大きくなりがちです。

だからこそ——相続対策は「持ち主が元気なうち」に、税金(評価・納税資金)と遺言(承継先)の両面で設計しておくことが肝心です。ご家族に負担を遺さないために、早めにご相談ください。

出典・参考

※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。

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よくあるご質問

ドバイの不動産は、日本の相続税の対象になりますか?
なります。日本の相続税は全世界の財産が対象のため、海外不動産も含まれます。「無税の国の資産だから対象外」ではありません。
国内の不動産より相続税が重くなると聞きました。なぜですか?
国内不動産は路線価など低めの基準で評価できますが、海外不動産は原則として時価(市場価格)で評価するためです。相続発生日の為替で円換算する点も、円安局面では負担を押し上げます。
UAEは相続税がないので、何も準備しなくて大丈夫ですか?
税金はかかりませんが、有効な遺言がないと、UAEでの承継の結果がかなり不透明になります(裁判所・当局の裁量が広く、想定どおりに分けられない恐れがあります)。非ムスリム向けのDIFC Willsを整えておくことを強くおすすめします。日本にいながらオンラインで署名・登録ができ、不動産だけでなくドバイ法人の株式も、1通でドバイ・アブダビ両方の資産もカバーできます。
遺言は、わざわざドバイへ行かないと作れませんか?オフプランの物件でも作れますか?
渡航は不要です。回線が良好であれば、日本からオンラインで署名・登録ができます。オフプラン(完成前)の権利も対象になるため、完成を待たずに今から準備できます。
家族で移住すれば、日本の相続税は避けられますか?
避けられるとは限りません。日本に住所があった期間に関する「10年ルール」などにより、移住後も一定期間は海外財産が日本の相続税・贈与税の対象になり得ます。
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本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。最終的なご判断は、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。