ドバイ・アブダビ不動産は、個人と法人どちらで持つべきか
先に結論をお伝えします。「法人にすれば無税」も「個人の方が必ず得」も、どちらも正しくありません。 正解は、保有目的・保有期間・あなたとご家族の居住実態・将来の出口(売却や承継)まで見て、はじめて決まります。そして厄介なことに、この判断は物件を買った後では取り返しがつきにくい。だからこそ、購入の前に器(個人か法人か)を決めるべきです。本ページでは、UAEの法人税、日本の合算課税、居住・実体という3つの税務上の柱に加え、維持コスト・銀行口座・暗号資産(出国税)という実務上の論点まで、順を追って整理します。
論点①:UAEの「9%法人税」と、2026年末で消える優遇
「ドバイ=無税」というイメージは、もう過去のものです。UAEは2023年6月から連邦法人税を導入しており、課税所得のうちAED 375,000(約1,600万円)を超える部分に標準税率9%がかかります。
ここで多くの方が見落とすのが、いま中小企業が使っている「実質ゼロ」の優遇が、期限つきだという点です。
UAEには移行期の特例として、年間売上がAED 3,000,000(約1億2,800万円)以下の事業者なら「課税所得が無いものとみなす」選択ができる制度(中小企業向け救済措置)があります。要は、申告すれば法人税ゼロにできる枠です。ところが——
つまり、「小さい法人だから当面は税金ゼロ」というのは、2026年末で終わる前提の話です(本稿執筆時点で延長は公表されていません)。2027年からは、売上規模に関わらず法人税の申告が毎年必要になる見込みで、会計帳簿の水準(発生主義・国際会計基準準拠)や、関連者間取引の価格設定(移転価格)への対応も求められる見込みです。「とりあえず法人を作っておく」が、翌年から実務負担に変わるわけです。
【数値イメージ:法人維持コストが利回りに与える影響】
たとえば1.13億円の物件(当社の平均購入像)を法人保有し、年間維持コストを150万〜200万円とすると、それだけで実質利回りが年あたり概ね1.3〜1.8ポイント分目減りする計算になります。複数物件をまとめて1法人で持てばコストは分散できますが、1〜2戸のために法人を作ると、税務メリットよりコストが勝つこともあります。
フリーゾーン法人の0%は「無条件」ではない
UAEの法人税は「一律で安い」わけではなく、適格フリーゾーン法人(QFZP)に該当すれば、その適格所得(Qualifying Income)に対して0%という別枠の優遇があります(適格所得でない所得には9%)。ただしQFZPになるには、①UAE内で十分な事業実体を維持すること、②適格所得を得ること、③通常の法人税の対象となる選択をしていないこと、④独立企業間原則(アームスレングス)と移転価格文書化に従うことなどの要件をすべて満たす必要があります。要件のいずれかを満たせなくなると、その課税期間の初めにさかのぼってQFZPでなかったものとして扱われます。
不動産投資との関係でとくに注意すべきは、「適格所得」に何が含まれるかは細部が政令(閣議決定)で定められており、不動産から生じる所得の扱いは一律ではない点です。「フリーゾーンに作れば不動産も0%」と単純化はできません。
論点②:日本に住んだまま法人で持つと効く「CFC(外国子会社合算税制)」
ここが、日本人投資家にとっていちばん怖く、いちばん誤解されているところです。
日本にお住まいの方(日本居住者)が、税の軽い国に法人を作り、そこに利益を貯めても、その法人に独立した事業としての実体が乏しければ、利益はオーナーである日本居住者本人の所得とみなされ、日本で課税されます。これが外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制)の考え方です。
そして重要なのが、UAEの法人税率9%は、日本がこの合算課税を検討し始める水準を下回っているという点です。だからこそ、UAE法人を使う場合は「実体があるか」がより厳しく問われます。
要するに、「UAE法人を作っただけ」では日本の税金は消えません。むしろ、実体のない器は日本側で課税される的になります。
論点③:いちばん誤解される「居住」と「実体」の正体
合算課税を避けるうえでも、ご自身の移住を考えるうえでも、決定的な区別があります。
個人:ビザの居住と、税務上の居住は別物
UAEの居住ビザは、一定期間ごとの入国などで維持できます。しかし、ビザを維持できていても、税務上は依然として日本の居住者と判断されることがあります。「半年に一度ドバイへ行けば日本の税金が切れる」という理解は危険です。
税務上どちらの国の居住者かは、滞在日数だけでなく、生活の本拠がどこにあるかを総合的に見て決まります。具体的には、次のような事情が判断材料になり得ます。
たとえば、配偶者や未成年のお子様は日本に残り、ご本人が帰国するたびにその家族と暮らす——あるいは単身でも日本に持ち家があり、戻るたびに毎回そこに滞在する——という形だと、生活の本拠は日本にあると見られやすくなります。逆に、家族ごとUAEに移り、帰国時も決まった滞在先がなく毎回ホテル、という状態であれば、日本での居住実態は薄いと判断されやすくなります。「年数」や「回数」だけで決まるものではない、というのが実務の感覚です。
法人:問われるのは「どこで意思決定しているか」
法人の実体で、近年とくに重要になっているのが「意思決定がどこで行われているか(管理支配地)」という論点です。
不動産投資で言えば、買う・売る・貸すといった投資の意思決定を、実際に誰が、どこで下しているか。理想は、その意思決定の責任者——それはオーナーご本人でも、雇われた社長(ディレクター)でも構いません——がドバイに居住して、現地で判断している状態です。
ただし、ここはオンライン会議が当たり前になった今、判断が一段と複雑で流動的になっています。代表が物理的にドバイにいることが常に必須とは限らず、誰が・どこで・どう意思決定しているかを総合的に見て評価されます。
だからこそ——購入前にぜひご相談ください。買ってからでは、器の作り直しに費用も時間もかかり、対応が遅れることもあります。 「法人で買えば大丈夫」と早合点する前に、ご自身の状況に合う器を一緒に設計しましょう。
論点④:では、いつ法人保有が合理的か
注意点を並べましたが、法人保有が常に不利というわけではありません。目的によっては、法人で持つ方が理にかなうケースもあります。
※あくまで一般的な傾向です。最適解は個別事情で変わります。
ひとことで言えば、「節税」だけを動機に器を選ばないこと。1戸を数年で売り抜けるのか、複数戸を長期保有して将来お子様へ承継するのか——目的が違えば、答えは正反対になります。
論点⑤:見落とされがちな「法人の銀行口座」という壁
法人保有を考えるとき、税務と同じくらい実務上の障害になりやすいのがUAE法人の銀行口座開設です。とくに、日本法人の子会社としてUAE法人を設立する場合、口座開設のハードルは一段と高くなることがあります。器の設計が税務上は最適でも、口座が開けなければ運用が回りません。
ここは当社の実務上の強みをお伝えしておきます。口座開設のハードルを下げるお手伝いを、2つの方法でご用意しています。
ひとつは、当社が提携するローカル大手銀行のリレーションシップマネージャーをお繋ぎする方法です。担当者を介することで、法人口座開設のハードルをぐっと下げられます。
もうひとつは、当社が独自にルートを持つプライベートバンクを使う方法です。すでにそのプライベートバンクに口座をお持ちの方はもちろん、新規に開設いただいたうえで、法人口座の開設までお手伝いできます。
「法人で持ちたいが、口座開設が不安」という方は、ぜひ早い段階でご相談ください。ここは購入前に道筋をつけておくべき論点です。
論点⑥:暗号資産で買うなら必読——「出国税」と移住タイミング
当社は暗号資産での購入にも対応していますが、ここは制度の理解とタイミングの設計が、手取りを大きく左右します。順を追って整理します。
そもそも「出国税(国外転出時課税)」とは
日本には、一定額以上の資産を持つ人が日本を出国(非居住者化)する際、含み益に課税する「国外転出時課税制度」があります。ざっくり言うと、対象となる資産(現在は有価証券などが中心)の時価が合計1億円以上で、かつ出国前10年以内に日本に5年超お住まいだった方が日本を出るとき、まだ売っていない含み益も「売ったものとみなして」課税される、という仕組みです。
暗号資産の「今」と「これから」
現時点では、暗号資産は出国税の対象資産に含まれていません。 つまり、いま暗号資産を持ったまま出国しても、出国税はかかりません。
ただし、暗号資産に金融商品取引法(金商法)が適用され、出国税の対象に取り込まれる公算が高いとみられています。その場合、2028年以降は、暗号資産を暗号資産のまま保有して出国すると、含み益に出国税が課されるリスクが生じます。
ここで効くのが「不動産への組み換え」とタイミング
重要なのは、海外不動産は出国税の対象ではないという点です。したがって、出国税が暗号資産に及ぶ前に暗号資産を海外不動産に組み換えておけば、その含み益に出国税はかかりません。
ただし、落とし穴があります。日本に居住したまま含み益のある暗号資産で不動産を購入すると、その購入時点で暗号資産の利益が確定したものとみなされ、日本で課税されます(雑所得等)。つまり「日本居住中に買えば、出国税は避けられても、その場で利確課税」になる。
どのルートが最適かは、含み益の大きさ・移住の予定時期・制度改正の最終的な姿によって変わります。「いつ買うか」「いつ移住するか」の順序設計が、税負担を左右するということです。
「納税猶予制度」という選択肢
出国税には、納税を猶予する制度もあります。出国時に納税管理人を定め、担保を提供するなどの手続きをとれば、課税の納付を一定期間(原則5年・延長で最長10年)猶予でき、その間に日本へ帰国して対象資産を持ち続けていれば、出国税を取り消せる(更正の請求ができる)仕組みです。「数年だけ海外」を考える方には関係し得る制度ですが、手続き・担保・期限の管理が必要で、設計を誤ると重い課税になります。
出典・参考
- UAE連邦法人税法(Federal Decree-Law No. 47 of 2022)および関連政令(閣議決定):法人税率・適格フリーゾーン法人(QFZP)・中小企業向け救済措置の各規定
- UAE連邦税務庁(FTA):法人税・フリーゾーン課税に関する各規定
- 国税庁:外国子会社合算税制、居住者判定、国外転出時課税(出国税)・納税猶予、暗号資産の課税に関する各項目
※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。
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よくあるご質問
結局、個人と法人ではどちらが得ですか?
「2026年末で中小の優遇が終わる」と聞きました。今から法人を作らない方がいい?
ドバイに住んで半年に一度日本へ行く程度なら、日本の税金は切れますか?
雇われ社長をドバイに置けば、法人の実体は認められますか?
法人で持ちたいのですが、UAEの銀行口座は開けますか?
暗号資産でドバイ不動産を買うと、税金はどうなりますか?
「出国税」とは何ですか。数年だけ海外に住む場合も関係しますか?
本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。最終的なご判断は、お客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。