ドバイ・UAE法人設立ガイド|設立後の手続き・税務・ビザ
ドバイ・アブダビでの会社設立は、ライセンスを取得して終わりではありません。むしろ「設立後」にこそ、更新・税務登録・ビザ・コンプライアンスといった、放置すると罰金や口座凍結につながる実務が待っています。本ガイドは、UAE現地の会社設立実務に加え、日本居住者が見落としがちな「日本側の課税」までを、国際弁護士・税理士の視点で整理したものです。
この記事の全体像
UAEでの会社設立は「作って終わり」ではなく、設立後の更新・税務・ビザ・コンプライアンスを年次で回し続けることが本番です。さらに日本居住者は、UAE側だけでなく日本側の課税まで一体で設計する必要があります。まず全体像を掴んでください。
1. まず決める:メインランド vs フリーゾーン
日本人投資家が最初に迷うのがこの選択です。メインランド(UAE本土)法人はUAE国内で広く事業ができる一方、原則として実体オフィスの賃貸契約(Ejari/エジャリ)が設立時に必要です。フリーゾーン法人は手続きが軽く、当局によってはバーチャルリース(物理オフィス不要)が認められ、業種によっては税制上の優遇(適格所得の0%CT)が受けられます。どちらもライセンス更新時にリース契約(実体・バーチャル問わず)の更新が必要です。事業内容・顧客の所在地・税務メリットで選びます。
2. ライセンスの更新
トレードライセンスは毎年、期限日までに更新が必要です(フリーゾーンで別パッケージを選んだ場合を除き、有効期間は原則1年)。更新時には会社の直近3〜6ヶ月の銀行取引明細の提出を求められることがあります。期限切れは罰金の対象です。
3. 税務登録:コーポレートタックス(CT)とVAT
コーポレートタックス(CT)は、FTA(連邦税務庁)の規則により原則すべての法人がCT登録を行う必要があります。閾値に満たない場合や、フリーゾーンの一部適格活動は0%となり申告不要となることがありますが、登録自体は罰則回避のため必須です。
VAT(付加価値税)は、UAE居住事業者の登録義務の閾値が年間課税売上 AED 375,000。これを超えると登録と5%のVAT申告が必要です。閾値に関わらず、ライセンスと個人情報(パスポート・ビザ・EID)は毎年FTAで更新しておく必要があります(怠るとアカウント停止・罰金等)。申告はFTA公認エージェントのみが代行・提出でき、会計帳簿・請求書・契約書の保存が義務付けられているため、記帳代行/FTA公認エージェントの起用が推奨されます。
4. ビザと滞在ルール(種類で国外滞在の扱いが3段階に分かれる)
ここは「ビザの種類」で国外滞在の扱いが大きく変わる最重要ポイントです。
標準の居住ビザ(雇用・扶養・フリーランス・標準フリーゾーン等)は有効期間が一般に2年。UAE国外に180日(約6ヶ月)連続で滞在すると自動的に失効します(政府公式ポータル u.ae の一般則)。失効しても、ビザ満了前であれば再入国許可(re-entry permit)で救済できる場合があります。更新は期限前に、原則本人がUAE国内にいる状態で行い、eChannelカードの維持・年次更新が必要です。
投資家/パートナービザは、公式ポータルが180日ルールの例外カテゴリに「有効な居住ビザを持つ投資家」を明記しており、標準ビザより国外滞在の猶予が長く扱われます。実務上は最長1年(365日連続)まで国外に滞在してもビザが有効なら居住資格を失わず、365日を超える場合は再入国許可が必要です(出典:提携法律事務所の実務。公式ポータルは「例外」と明記するが具体日数は非公表)。更新時は個人の3〜6ヶ月の銀行明細の提出が必要です。
ゴールデンビザ(不動産取得型を含む)は、不動産をAED200万以上で取得すると取得できる5〜10年のビザで、上記の180日/365日ルールの適用外です。ビザが有効な限り国外滞在の期間制限なく居住資格を維持でき、国外滞在中にビザが満了した場合のみ無効になります。日本との二拠点で過ごす投資家にとっては、この「国外滞在の自由度」が最大の実務メリットです。ただしEmirates ID(EID)には別途有効期限があり、更新時には資格要件(不動産AED200万の保有維持等)が再確認されます。詳しくは日本居住者の課税関係もあわせてご確認ください。
参考として、グリーンビザ(5年・更新可)とブルービザ(10年)も、雇用主に縛られない自己スポンサー型で同じ180日/365日ルールの適用外グループです。グリーンはスキル人材(MOHRE職業レベル1〜3・学士以上・月給AED15,000以上)/フリーランス・自営(MOHRE自営許可・直近2年の年収AED360,000以上等)/投資家(UAE事業への投資・不動産AED200万のような最低資本要件なし)が対象、ブルーは環境・サステナビリティ分野の顕著な貢献者向けです(出典:ICP公式 icp.gov.ae)。不動産投資家のお客様に主に関係するのはゴールデン(不動産取得型)です。
5. 法人銀行口座の開設
法人口座の開設には、株主または任命マネージャーの少なくとも1名がUAE居住者で、有効なEIDとUAE登録の携帯番号を持っていることが条件です。口座開設は設立後の最初の関門になりやすいため、居住ビザ・EIDの取得と並行して進めます。手続き・必要書類・銀行の使い分けは銀行口座開設ガイドで詳しく解説しています。
6. コンプライアンス:UBO・AML・KYC
UBO(実質的支配者)開示:UAE法人は実質的支配者を開示し、正確な所有記録を維持する義務があります。AML(マネーロンダリング対策):不動産・金融・貴金属など特定業種には追加のAML義務があり、当局からUBO・AML申告の要請が来たら確実に対応する必要があります。KYC更新:メールアドレス・連絡先などのKYC情報は、AML当局・FTA・銀行等に対し毎年更新します。従業員を雇う場合は、雇用契約の作成・登録、WPS(賃金保護システム)経由の給与支払い、法定労働時間・休暇・退職金(End of Service)等、UAE労働法の遵守が必要です。会社を清算する場合は、ライセンス取消・口座閉鎖の前にCT・VATの登録抹消を行わないと罰則の対象になります。
7. 設立後・年次チェックリスト
設立後に回し続ける主な項目です(頻度・期限は一般的な目安。最新は当局・専門家にご確認ください)。
| 項目 | 頻度 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| トレードライセンス更新 | 年1回 | 期限前 |
| リース(Ejari/バーチャル)更新 | 年1回 | ライセンス更新時 |
| 居住ビザ/eChannel 更新 | 標準2年・ゴールデン5〜10年/年1回 | 期限前(標準は本人在UAE) |
| CT・VAT の申告/情報更新 | 年次(申告は規則による) | FTA期日 |
| UBO・AML・KYC 更新 | 年1回/要請時 | 随時 |
| 会計帳簿・銀行明細の整備 | 常時 | 更新時に提出 |
8.【独自・最重要】日本側の課税 ― ここを見落とすと危険
UAE現地のCTが0〜9%でも、日本居住者がUAE法人を保有すると、日本側で課税される論点が残ります。代表が外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制/CFC)です。一定の要件に当たるUAE子会社の所得は、日本の親(個人・法人)の所得に合算して課税されうる——つまり「UAEで無税だから日本でも無税」ではありません。法人保有スキームを組む前に、必ず日本側の税務(CFC・実質的な事業実体の有無・申告)を設計に織り込む必要があります。詳しくはUAE法人保有と9%法人税・合算課税(CFC)を参照し、税理士にご相談ください。
出典・参考
- UAE連邦税務庁(FTA):コーポレートタックス/VAT 登録・申告
- UAE政府ポータル u.ae:居住ビザ・国外滞在ルール(180日)
- ICP(icp.gov.ae):グリーンビザ/ブルービザの要件
- 提携法律事務所の実務資料(2026年6月時点。guidelines can change)
※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。
関連ページ
よくあるご質問
メインランドとフリーゾーン、どちらで設立すべきですか?
コーポレートタックス(CT)の登録は必ず必要ですか?
投資家ビザだと、どのくらい国外に滞在できますか?
ゴールデンビザなら国外滞在は自由ですか?
UAEで無税なら、日本でも税金はかからないのですか?
本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の法務・税務アドバイスではありません。規制は変更され得るため、最終的なご判断はお客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。