税務・法務(一般情報)

ドバイ・UAE法人設立ガイド|設立後の手続き・税務・ビザ

監修:森 和孝(税理士・国際弁護士) | 本記事は一般的な情報提供です

ドバイ・アブダビでの会社設立は、ライセンスを取得して終わりではありません。むしろ「設立後」にこそ、更新・税務登録・ビザ・コンプライアンスといった、放置すると罰金や口座凍結につながる実務が待っています。本ガイドは、UAE現地の会社設立実務に加え、日本居住者が見落としがちな「日本側の課税」までを、国際弁護士・税理士の視点で整理したものです。

ご確認ください(免責)本記事は、当研究所がUAEの提携法律事務所の実務情報を踏まえ、日本人投資家向けに再構成・監修した一般的な情報提供であり、個別の法務・税務助言ではありません。記載の規制・数値は2026年6月時点の一般的な目安です。UAEの税務・ビザ制度は変更されることがあり、最新の取り扱い・個別事情は必ず当局または専門家にご確認ください。

この記事の全体像

UAEでの会社設立は「作って終わり」ではなく、設立後の更新・税務・ビザ・コンプライアンスを年次で回し続けることが本番です。さらに日本居住者は、UAE側だけでなく日本側の課税まで一体で設計する必要があります。まず全体像を掴んでください。

図:本ガイドの全体像(設立 → 運用 → 日本側対応)
① 設立
メインランド/フリーゾーンの選択
トレードライセンス取得
リース(Ejari/バーチャル)
② 運用(年次)
ライセンス・リース更新
CT/VAT 登録・申告
ビザ・eChannel 更新
UBO/AML/KYC
③ 日本側対応
外国子会社合算税制(CFC)
事業実体・申告の設計
「UAEで無税=日本で無税」ではない

※ UAE側の手続きだけでなく、日本居住者は日本側の課税設計まで一体で見るのが要点です。

1. まず決める:メインランド vs フリーゾーン

図1:メインランド vs フリーゾーン
メインランド(UAE本土)
事業範囲:UAE国内で広く事業可
オフィス:原則 Ejari(実体賃貸)が必要
税優遇:標準
手続き:相対的に重い
フリーゾーン(経済特区)
事業範囲:ゾーン規定・対象業種に準拠
オフィス:バーチャルリース可の場合あり
税優遇:適格所得の0%CT等があり得る
手続き:相対的に軽い

日本人投資家が最初に迷うのがこの選択です。メインランド(UAE本土)法人はUAE国内で広く事業ができる一方、原則として実体オフィスの賃貸契約(Ejari/エジャリ)が設立時に必要です。フリーゾーン法人は手続きが軽く、当局によってはバーチャルリース(物理オフィス不要)が認められ、業種によっては税制上の優遇(適格所得の0%CT)が受けられます。どちらもライセンス更新時にリース契約(実体・バーチャル問わず)の更新が必要です。事業内容・顧客の所在地・税務メリットで選びます。

2. ライセンスの更新

図2:設立後の「年次サイクル」
1. ライセンス更新
期限前・年1回
2. リース更新
ライセンス更新時
3. ビザ/eChannel
期限前
4. CT/VAT 申告
FTA期日
5. UBO/AML/KYC
年1回・要請時

※ いずれも放置すると罰金・口座凍結等につながります。

トレードライセンスは毎年、期限日までに更新が必要です(フリーゾーンで別パッケージを選んだ場合を除き、有効期間は原則1年)。更新時には会社の直近3〜6ヶ月の銀行取引明細の提出を求められることがあります。期限切れは罰金の対象です。

3. 税務登録:コーポレートタックス(CT)とVAT

図3:税務登録の判定(CT/VAT)
コーポレートタックス(CT)
原則:すべての法人が登録
閾値未満・適格所得 → 0%(申告不要の場合あり)
登録自体は罰則回避のため必須
VAT(付加価値税)
年間課税売上 AED 375,000 超 → 登録
税率 5%
申告はFTA公認エージェントが代行

※ 2026年6月時点の一般的な目安。最新の閾値・適格条件は当局・専門家にご確認ください。

コーポレートタックス(CT)は、FTA(連邦税務庁)の規則により原則すべての法人がCT登録を行う必要があります。閾値に満たない場合や、フリーゾーンの一部適格活動は0%となり申告不要となることがありますが、登録自体は罰則回避のため必須です。

VAT(付加価値税)は、UAE居住事業者の登録義務の閾値が年間課税売上 AED 375,000。これを超えると登録と5%のVAT申告が必要です。閾値に関わらず、ライセンスと個人情報(パスポート・ビザ・EID)は毎年FTAで更新しておく必要があります(怠るとアカウント停止・罰金等)。申告はFTA公認エージェントのみが代行・提出でき、会計帳簿・請求書・契約書の保存が義務付けられているため、記帳代行/FTA公認エージェントの起用が推奨されます。

4. ビザと滞在ルール(種類で国外滞在の扱いが3段階に分かれる)

図4:ビザ種類別・国外滞在ルールの3段階
標準の居住ビザ
有効期間:一般に2年
国外 180日連続で自動失効
満了前なら再入国許可で救済
更新は本人在UAE+eChannel
投資家/パートナー
公式の180日例外カテゴリ
実務上 最長365日連続まで可
超過時は再入国許可
更新時に3〜6ヶ月の銀行明細
ゴールデンビザ
不動産AED200万以上で取得(5〜10年)
180日/365日ルール適用外
国外滞在の期間制限なし
満了時のみ無効・EIDは別途期限

※ グリーンビザ(5年)・ブルービザ(10年)も同じ「自己スポンサー型・適用外」グループ。投資家/パートナーの具体日数は公式非公表(出典:提携法律事務所の実務)。

ここは「ビザの種類」で国外滞在の扱いが大きく変わる最重要ポイントです。

標準の居住ビザ(雇用・扶養・フリーランス・標準フリーゾーン等)は有効期間が一般に2年UAE国外に180日(約6ヶ月)連続で滞在すると自動的に失効します(政府公式ポータル u.ae の一般則)。失効しても、ビザ満了前であれば再入国許可(re-entry permit)で救済できる場合があります。更新は期限前に、原則本人がUAE国内にいる状態で行い、eChannelカードの維持・年次更新が必要です。

投資家/パートナービザは、公式ポータルが180日ルールの例外カテゴリに「有効な居住ビザを持つ投資家」を明記しており、標準ビザより国外滞在の猶予が長く扱われます。実務上は最長1年(365日連続)まで国外に滞在してもビザが有効なら居住資格を失わず、365日を超える場合は再入国許可が必要です(出典:提携法律事務所の実務。公式ポータルは「例外」と明記するが具体日数は非公表)。更新時は個人の3〜6ヶ月の銀行明細の提出が必要です。

ゴールデンビザ(不動産取得型を含む)は、不動産をAED200万以上で取得すると取得できる5〜10年のビザで、上記の180日/365日ルールの適用外です。ビザが有効な限り国外滞在の期間制限なく居住資格を維持でき、国外滞在中にビザが満了した場合のみ無効になります。日本との二拠点で過ごす投資家にとっては、この「国外滞在の自由度」が最大の実務メリットです。ただしEmirates ID(EID)には別途有効期限があり、更新時には資格要件(不動産AED200万の保有維持等)が再確認されます。詳しくは日本居住者の課税関係もあわせてご確認ください。

参考として、グリーンビザ(5年・更新可)ブルービザ(10年)も、雇用主に縛られない自己スポンサー型で同じ180日/365日ルールの適用外グループです。グリーンはスキル人材(MOHRE職業レベル1〜3・学士以上・月給AED15,000以上)/フリーランス・自営(MOHRE自営許可・直近2年の年収AED360,000以上等)/投資家(UAE事業への投資・不動産AED200万のような最低資本要件なし)が対象、ブルーは環境・サステナビリティ分野の顕著な貢献者向けです(出典:ICP公式 icp.gov.ae)。不動産投資家のお客様に主に関係するのはゴールデン(不動産取得型)です。

5. 法人銀行口座の開設

図5:法人銀行口座 開設までのステップ
STEP 1
居住ビザ・EID を取得
STEP 2
株主/任命マネージャーの1名以上がUAE居住+UAE番号
STEP 3
必要書類を揃えて開設申請

法人口座の開設には、株主または任命マネージャーの少なくとも1名がUAE居住者で、有効なEIDとUAE登録の携帯番号を持っていることが条件です。口座開設は設立後の最初の関門になりやすいため、居住ビザ・EIDの取得と並行して進めます。手続き・必要書類・銀行の使い分けは銀行口座開設ガイドで詳しく解説しています。

6. コンプライアンス:UBO・AML・KYC

図6:設立後コンプライアンスの基本
開示・記録
UBO(実質的支配者)開示
正確な所有記録の維持
マネロン対策
AML(不動産等は追加義務)
KYC情報を年次更新
雇用するなら
雇用契約の作成・登録
WPS経由の給与支払い
労働法(休暇・退職金等)

※ 清算時はライセンス取消・口座閉鎖の前に CT・VAT の登録抹消が必要です。

UBO(実質的支配者)開示:UAE法人は実質的支配者を開示し、正確な所有記録を維持する義務があります。AML(マネーロンダリング対策):不動産・金融・貴金属など特定業種には追加のAML義務があり、当局からUBO・AML申告の要請が来たら確実に対応する必要があります。KYC更新:メールアドレス・連絡先などのKYC情報は、AML当局・FTA・銀行等に対し毎年更新します。従業員を雇う場合は、雇用契約の作成・登録、WPS(賃金保護システム)経由の給与支払い、法定労働時間・休暇・退職金(End of Service)等、UAE労働法の遵守が必要です。会社を清算する場合は、ライセンス取消・口座閉鎖の前にCT・VATの登録抹消を行わないと罰則の対象になります。

7. 設立後・年次チェックリスト

設立後に回し続ける主な項目です(頻度・期限は一般的な目安。最新は当局・専門家にご確認ください)。

項目頻度期限の目安
トレードライセンス更新年1回期限前
リース(Ejari/バーチャル)更新年1回ライセンス更新時
居住ビザ/eChannel 更新標準2年・ゴールデン5〜10年/年1回期限前(標準は本人在UAE)
CT・VAT の申告/情報更新年次(申告は規則による)FTA期日
UBO・AML・KYC 更新年1回/要請時随時
会計帳簿・銀行明細の整備常時更新時に提出

8.【独自・最重要】日本側の課税 ― ここを見落とすと危険

図7:日本側の課税(外国子会社合算税制・CFC)
UAE法人
現地CT 0〜9%(低税率)
日本居住者が保有
一定要件に該当
日本側で合算課税
親(個人・法人)の所得に合算

「UAEで無税だから日本でも無税」ではありません。

UAE現地のCTが0〜9%でも、日本居住者がUAE法人を保有すると、日本側で課税される論点が残ります。代表が外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制/CFC)です。一定の要件に当たるUAE子会社の所得は、日本の親(個人・法人)の所得に合算して課税されうる——つまり「UAEで無税だから日本でも無税」ではありません。法人保有スキームを組む前に、必ず日本側の税務(CFC・実質的な事業実体の有無・申告)を設計に織り込む必要があります。詳しくはUAE法人保有と9%法人税・合算課税(CFC)を参照し、税理士にご相談ください。

出典・参考

※ タックスアンサー番号・条文は変更され得ます。最新の内容は国税庁・UAE FTA等の一次情報および専門家にてご確認ください。

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よくあるご質問

メインランドとフリーゾーン、どちらで設立すべきですか?
事業範囲・顧客の所在地・税務メリットで選びます。メインランドはUAE国内で広く事業でき原則Ejari(実体賃貸)が必要、フリーゾーンは手続きが軽くバーチャルリース可の場合や適格所得の0%CT等の優遇があり得ます。個別事情によるため専門家にご確認ください。
コーポレートタックス(CT)の登録は必ず必要ですか?
原則すべての法人がCT登録を行う必要があります。閾値未満や一部のフリーゾーン適格活動は0%・申告不要となる場合がありますが、登録自体は罰則回避のため必須です(2026年6月時点)。
投資家ビザだと、どのくらい国外に滞在できますか?
標準の居住ビザは国外180日連続で失効しますが、投資家/パートナービザは公式に180日ルールの例外とされ、実務上は最長365日(1年)連続まで居住資格を失いません。365日超は再入国許可が必要です(具体日数は公式非公表・出典は提携法律事務所)。
ゴールデンビザなら国外滞在は自由ですか?
不動産AED200万以上で取得する5〜10年のゴールデンビザは180日/365日ルールの適用外で、ビザが有効な限り国外滞在の期間制限はありません。満了時のみ無効になります(EIDには別途有効期限あり)。
UAEで無税なら、日本でも税金はかからないのですか?
いいえ。日本居住者がUAE法人を保有すると、外国子会社合算税制(CFC)により子会社の所得が日本側で合算課税されうるなど、日本側の課税論点が残ります。「UAEで無税=日本でも無税」ではないため、税理士にご相談ください。
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本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、個別の法務・税務アドバイスではありません。規制は変更され得るため、最終的なご判断はお客様ご自身および専門家にご相談のうえお願いいたします。

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